うさぎとファンタジー

ばらばらな思いを整理する雑記帳。

おんな城主直虎(18)あるいは裏切りという名の鶴

2017・5・7放送

あらすじ

  種子島という名前の火縄銃を生産しようとしていたのを政次に発見され、謀反の疑いをかけられる直虎。之の字は怒り、政次を斬り殺そうとするのを直虎は止める。後見を自ら降りれば種子島のことを今川に讒言しないと政次に約束させ、直虎は虎松の後見を降りるために政次と之の字とともに駿府へ向かった。置いていかれた銃を前に、方久は金の心配ばかりするので、六左が怒る。六左が祐椿尼と南渓和尚に事情を話している間に、方久はゼニの匂いがすると言って出て行ってしまう。

  直虎は最後の頼みの綱として寿桂尼に会おうと画策するが、病に倒れて以降寿桂尼は寝込んでいて面会謝絶の状態であった。

  先に、今川氏真に目どおりを願ったのは、なんと方久であった。火縄銃を生産したいと思い作らせていたが、直虎に金は出せぬと断られたので、氏真が火縄銃生産に金を出してくれないかと申し出たのである。火縄銃が手元で生産できるという話に氏真は飛びつき、方久は種子島を生産できる当てが見つかった上に、直虎の謀反を疑わせる材料を取り除いたのである。それを聞いた直虎はほっとして涙をにじませて笑った。

  政次が方久が勝手に目どおりしたことを氏政に詫びていると急使が飛び込んでくる。その様子に一旦下がったふりをしながら盗み聞きをする政次。なんと武田信玄が息子の義信を謀反の疑いで幽閉したというのだ。義信に嫁いだ氏真の妹が、武田と今川の同盟の絆であったので、今川家にとっても一大事であった。同じ時、寿桂尼の危篤が伝えられる。手を握る氏真の必死の呼びかけに答えるように、寿桂尼の意識が回復する。この難局を乗り切れるのは信玄にも影響力を持つ寿桂尼だけであった。

  今まさに、今川の力が弱まり、北の武田、東の北条との同盟関係が崩れようとしていた。さらには松平の力が増し、大国に囲まれた井伊の舵取りは一層難しくなっていた。

  井伊の屋敷に帰って考え込み、なつに心配される政次。なつに土産の菓子を渡し、寂しかろうと気遣う。

  南渓和尚に次第を説明し、自分の力不足を嘆く直虎。自信喪失気味の直虎に、南渓和尚兵法書を大量に持ってくる。これを読むと政次の考えが分かるかと問う直虎に、そうかもしれぬと頷く南渓和尚。それから兵法書を読みふける直虎であったが、あまり頭に入らない様子。

  なつが祐椿尼と直虎を訪ねて来たときに、政次の話になった。どうして小野の屋敷に戻ったのかという質問に、井伊のみなとの間を取り持つためだと答えるなつ。さらには、政次のことを気遣ってくれる優しい人だと評するので、直虎は驚いてしまう。なつが帰った後、祐椿尼は政次が結婚しようとしないことが不思議だとこぼす。自分の家を大きくしないにもかかわらず、乗っ取りを企むような執着はどこからくるのかと。直虎はなつの言葉に、優しかった昔の鶴を思い返していた。

  その夜直虎は「敵を欺くにはまず味方から」という言葉に触れ、ふとしたことから政次の思惑に思い至る。その勢いでもう寝静まっていた寺に押しかけ、南渓和尚を叩き起こす。政次の思惑とは、直虎も虎松も首をはねられることなく、直虎を後見から降ろし、自らが矢面に立とうとする策略だったのではないかと。そもそも直親を裏切ったところから、井伊を守ろうとしていたのではないかと。南渓和尚は同じことを言っていた死ぬ直前の直親を思い返しながら、そうであったらいいと思うが自分は政次ではないからわからないという。直虎は政次の思いを汲みたいとおもうと言った上で、政次は一つだけ間違っているという。

  政次はご初代様の井戸で、直親に向けて一人話していた。そこへ直虎がやってきて、気まずそうな顔をしながら政次の袖を掴んでひきとめ、話そうという。敵も味方も欺いた上で守るという兵法の話を持ち出すと、挙動不審になる政次。種子島という銃も失って、これからどうやって井伊を守っていったらいいかと問う直虎。黙りこくる政次に、直虎は自分自身でこの道を選んだこと、自分をかばわなくて良いことを切々と訴える。しばらくして、返事が返る。戦わぬ道を探るという政次。力のない井伊が乱世を生き延びるにはそれしかないという政次に、まっすぐに同意する直虎。そして、政次は武田義信が父信玄に幽閉された話をする。今川と武田の戦もあるかもしれないと。武田と松平の動きに目を配っておきたいという話を共有する直虎と政次。

  直虎が南渓和尚に相談すると、松下常慶はどうかと以前顔を合わせたことのある山伏を紹介される。常慶の秋葉神社(?)は武田にほど近く、彼自身は松平に出入りしており、松下家は今川の家臣であるという。南渓和尚に松平への恨みはもういいのかと問われると、恨みを後生大事に抱えておく贅沢は私には許されないと答える直虎。

  之の字に、「百戦百勝、善の善なるにあらず。戦わずして敵を屈することこそ、最上の勝ち」という言葉を披露し、このように目指すと言うと、之の字は笑って受け入れてくれた。

 

台詞

  • (直虎に対して)南渓和尚「お前の良さを殺してしまう気もしてのお。お前の良さは、諦めの悪さと、生まれついての型にはまらぬ考え方であるゆえな」
  • (直虎に対して)なつ「義兄(政次)は、夜道を密かに照らしてくれる、秋の月のようなお方にございます」なつ「直虎様、お立場として義兄と相容れぬことは致し方ございません。なれど、どうか、それが義兄のすべてであるとは思わないでくださいませ」
  • (直虎に対して)南渓和尚「もし仮にそうだとして、お主はどうするのじゃ。その想いにどう応えるのじゃ。直虎よ、仲良しごっこをしていては、政次が積み上げて来た策は水の泡となるだけぞ」
  • (政次に対して)直虎「誰よりも深く、井伊を守る策を考えているのはそなたであるからじゃ。だってそうであろう。そなたは井伊を手に入れることを考えてきたわけじゃ。手に入れればここはそなたの土地、必然守らねばならぬ。そなたのことじゃ、つけいる隙もないほど緻密な、まこといやらしい策を練り上げているのじゃろう。ならば、それを聞いてみたいとおもうのは当たり前のことであろう」直虎「政次、我は己で選んだのじゃ。この身を、直親の現し身とすることを。誰に望まれるでもなく、強いられるでもなく、己で選んだ。己の手で井伊を守ると、我は己で決めたのじゃ。ゆえにもし、我が女子であるから守ってやらねばならぬとか、辛い思いをせぬようにと考えておるなら、お門違い。無用の情けじゃ。我をうまく使え。我もそなたを、うまく使う。」
  • (直虎に対して)政次「私なら、戦わぬ道を探ります。戦に戦わずして勝つ、もしくは戦わずに済むように死力を尽くす。周りの思惑や動きにいやらしく目を配り、卑怯者臆病者よとの誹りを受けようと断固として戦いませぬ。それが、大国に挟まれた小さき井伊が生き延びる唯一の道かと考えます」
  • (直虎に対して)之の字「(直虎を揶揄して)“やってみねばわからぬ”!お止めしたところで、殿はそう言うお方ですから。ならば、それがしはしくじった時の備えをしておきます」

 

感想

  やはり、そうであったか!と膝を打つような政次の思惑が明らかになった。政次は守るべき対象として直虎を捉えていたがゆえに、後見の座から降ろして背にかばおうとしていたのだ、と。そのために肝心の直虎に憎まれることも辞さないと言うのは、優しいだけではない、肝の座った策略家ぶりだとおもう。そもそも、直親が死んでしまった時点で自分が憎まれ役になるという覚悟はしていたのだとおもう。直親が死んでしまったのだから自分に振り向いて欲しいと期待していたら、このような策略は思いつかないとおもうし、そのようなことが目的なら今川の犬になってまで井伊を守ろうとなどしないとおもう。やはり肝心なのは井伊家、直親の子供を無事井伊家当主にすることで、それを為すには直虎では能力不足だと思っていたという可能性も少しあるとおもう。

  しかし直虎は予想に反して家臣たちの信頼を集めていったし、政次の策略を見破るところまで成長した。もちろん見守っていた南渓和尚や祐椿尼のおかげではあると思うけれど、とにかく自力で。そして自分は自分で望んでこの場所に立っているのだから、かばわなくて結構だと直接伝えることまでしてのける。政次もきっと舌を巻いたに違いない。

  これからは裏で政次と意見の調整をしながら、表には直虎が立って、井伊を守っていくのかなと考えたら感慨深いものがある。

  今川、武田、北条の同盟関係も今は風前の灯火だし、松平も勢力拡大中、どうやって戦わずして世を渡っていくのか、今後が気になる。氏真のお貴族様っぽいところと寿桂尼(おばあちゃん)に頼りきっているところがすごく子供っぽくて他人事としてはすこし微笑ましい。寿桂尼は結構好きなので、死ななくてよかった。