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うさぎとファンタジー

ばらばらな思いを整理する雑記帳。

おんな城主直虎(9)桶狭間に死す

2017・3・5放送

キャスト

  • 中野直由(筧 利夫)…なおよし。井伊家から分家した井伊家の家臣で忠臣。戦に長けている。

 

あらすじ

  永禄三年(1560年)五月、今川義元は25000人以上の大軍を連れて尾張征伐に乗り出した。しかし、桶狭間において昼ごろ豪雨に見舞われ休憩中だった今川軍本隊に、尾張の織田軍が奇襲をかけ、たちまち乱戦に突入してしまう。

  一方井伊谷では、次郎法師ことおとわとその母千賀が、井伊家のご初代様の井戸で無事の祈りを捧げていたところ、昊天が走ってきて今川軍大敗を伝える。動揺するおとわと、井伊家の人々。

  松平元康は尾張の大高城を占拠しているところに今川義元の訃報に接し、どうしたらよいか戸惑いながら妻の瀬名による叱咤激励を思い出し、そのはずみで三河岡崎城を目指す。すると今川の城代は逃げてしまっており故郷である空の岡崎城を取り戻すことができた。

  次々と井伊谷に運び込まれる負傷者の手当てに奔走するおとわなど僧と井伊家ゆかりの女たち。奥山朝利が運び込まれ、手当てされながら小野玄蕃の見事な戦死を告げ、その妻なつは動揺を隠せない。小野政次は泣くのを必死でこらえていた。

  駿府では今川義元の代わりに指揮をしなくてはならなくなった今川氏真は、重責に耐えられなくなり家臣に丸投げしてしまう。

  井伊谷井伊直盛が首だけとなって帰還する。乱戦になり奥山孫一郎と二人で戦った直盛は、織田軍に首をあげられるよりは井伊のために死にたいと言い出し、自害する。その首を織田軍のふりをして掲げ乱戦を突破せよと直盛は言い、井伊に奥山孫一郎と言う若武者を残すことを選んだのである。それを聞き、ご初代様の井戸で号泣するおとわ。「いつか、もし…」と言いかけやめた、最後に見た父親を思い出し、おとわは言われなかった言葉の続きを探していた。

  直盛、玄蕃ほか、亡くなった16人の井伊の武者の葬儀が行われた。井伊の家臣の中に、血縁のものが亡くならなかったものはいなかった。そののち、奥山孫一郎が、「こののち中野直由に井伊を任せる」という直盛の遺言を伝える。力不足なのかと悔しい気持ちを押し殺す直親。病床で話を聞き、殿の遺言は小野政次の入れ知恵にちがいないと喚き出す奥山朝利に、直親は信じられない様子ながら疑いの気持ちを抱く。

  小野政次は政務に熱心に励み、その様子が奥山朝利の癇に障ったのか、奥山は小野家に嫁いだ娘なつとその子供亥之助(いのすけ)を取り戻すと息巻く。小野政次がなつに直接どうしたいか優しく問うと、なつは悲しみをにじませながら、お方様(千賀)にできれば残って欲しいと言われたこともあるし、引き続きこちらに厄介になりたいとお願いする。政次も、弟玄蕃の忘れ形見の亥之助を大事に思っている気持ちが溢れる。

  千賀は、亡くなった武者の遺族一人一人に手紙を書き、礼とお悔やみの気持ちを伝えていた。それに気づいたおとわも手伝っていたが、疲れて眠ってしまった千賀の傍らに、自分宛の文が残されていることに気づいてその場で読んでしまう。それは父親を亡くした娘を気遣う思いやりに溢れた文であった。

  そなたのお父上はお優しく、人の心を大切にするお方でした。それは時として頼りないとうつるほど。けれどお父上に私心はなく、井伊のためとあらばどこまでも身を削られる、そういうお方でした。井伊のために出家をし、井伊のために還俗を諦めたそなたは、お父上に似ています。そんなそなたが今ここにいてくれるということが、私にとってなによりありがたいことです。そうそう、私は何度も何度も、お父上がこういうのを聞きました。「今日働く次郎を見かけたが、また美しくなっておった。ボロをまとっておるというのに、あんな女子は他にはおらん。誰に似たのかのお。」思えば失礼な話です。「いつかもし、世が治まり穏やかになったら、辻が花を着せてやりたいのお。緋(ひ)か、葡萄色(えびいろ)、濃紅(こいくれない)もいいのお。美しいぞきっと。」そうして最後はいつも涙目で、「あの月と、どっちが美しいだろう。」たとえ、月のない夜でも。気丈なそなたのこと、我が身は墨染と無理をしているように思えます。この手紙が束の間、そなたをただの娘に戻せることを祈りつつ…。千賀。

  手紙を読みながらすすりなくおとわ。起きた千賀に月見をしたいと言うおとわだが、その時、直親としのが訪ねてくる。しのが喜びながら「後継ができた。亡き殿のくださった命。生まれ変わりではないか。」と言い出すと、千賀は急に泣き出してしまう。複雑な気持ちで陰から見守りながら、「お母様よかったのお」とだけ呟くおとわ。

  その夜、奥山朝利小野政次が酒の席でなつと亥之助をどうするか話し合うはずが、亥之助を人質としか思わぬ奥山朝利に、怒った小野政次が手酷く言い返すと、一旦は奥山が引いて納得したかに見えた。しかし、小野政次が背を向けると突然奥山が切りかかってきた。おとわが寺で負傷した政次を見つけ問いただすと、彼は呟く。「奥山殿を切ってしまった…」

 

感想

  長くなってしまった。しかし手紙を引用してよかった。やっぱり一言一言が重く、気高い文章だと思う。千賀お母さんの文章であると思えた。そして、お父さんの存在の大きさが伝わる回だった。井伊家にとってもそうだけど、特におとわにとってとても大切でかけがえのない愛する家族だった、そういう気持ちが伝わってくる回だった。

  緋か、葡萄色か、濃紅か。葡萄色(えびいろ)というのはぶどうのような赤紫のこと、濃紅は別名深紅で紅花染によるややピンクがかった濃い赤色のこと、ということで、お父さんにとっておとわは赤い色の似合う女の子だったと。どうしてか納得してしまうけれど、お父さんが言えずにいた「いつか、もし…」というのはそういう、なんでもない平和な想像だった。死んでしまってからわかるこんなささやかな、しかし実現するのは難しい願い、おとわにとってどれほど辛くてどれほど嬉しいだろう。少しでも心が慰められるといいけれど。

  そして直盛不在だと井伊家はこんなにも乱れてしまうのかと思うと、確かに直親には荷が重い仕事だったかなと思わざるを得ない。奥山家と小野家は縁戚関係になって、仲良くしていこうというところなのにこんなにいがみ合ってしまって。家臣に嫌われて居場所のないはずの小野政次が政務を取り仕切っているという状況も異常だし、これでもし小野家を排する内紛になってしまったら、織田家が喜ぶだけだと思うけどな。

  思いつきで岡崎城を占拠してしまった松平元康はこの後うまく立ち回らないと、妻と子が殺されてしまうよ。大変なことだよ。家康がこんなに間抜けに描かれていていいのか、と思わなくもないけど、多分立派に成長する前段階なのだと思う。

  ようやく子供が授かった直親としのに、おめでとう。