うさぎとファンタジー

ばらばらな思いを整理する雑記帳。

おんな城主直虎(9)桶狭間に死す

2017・3・5放送

キャスト

  • 中野直由(筧 利夫)…なおよし。井伊家から分家した井伊家の家臣で忠臣。戦に長けている。

 

あらすじ

  永禄三年(1560年)五月、今川義元は25000人以上の大軍を連れて尾張征伐に乗り出した。しかし、桶狭間において昼ごろ豪雨に見舞われ休憩中だった今川軍本隊に、尾張の織田軍が奇襲をかけ、たちまち乱戦に突入してしまう。

  一方井伊谷では、次郎法師ことおとわとその母千賀が、井伊家のご初代様の井戸で無事の祈りを捧げていたところ、昊天が走ってきて今川軍大敗を伝える。動揺するおとわと、井伊家の人々。

  松平元康は尾張の大高城を占拠しているところに今川義元の訃報に接し、どうしたらよいか戸惑いながら妻の瀬名による叱咤激励を思い出し、そのはずみで三河岡崎城を目指す。すると今川の城代は逃げてしまっており故郷である空の岡崎城を取り戻すことができた。

  次々と井伊谷に運び込まれる負傷者の手当てに奔走するおとわなど僧と井伊家ゆかりの女たち。奥山朝利が運び込まれ、手当てされながら小野玄蕃の見事な戦死を告げ、その妻なつは動揺を隠せない。小野政次は泣くのを必死でこらえていた。

  駿府では今川義元の代わりに指揮をしなくてはならなくなった今川氏真は、重責に耐えられなくなり家臣に丸投げしてしまう。

  井伊谷井伊直盛が首だけとなって帰還する。乱戦になり奥山孫一郎と二人で戦った直盛は、織田軍に首をあげられるよりは井伊のために死にたいと言い出し、自害する。その首を織田軍のふりをして掲げ乱戦を突破せよと直盛は言い、井伊に奥山孫一郎と言う若武者を残すことを選んだのである。それを聞き、ご初代様の井戸で号泣するおとわ。「いつか、もし…」と言いかけやめた、最後に見た父親を思い出し、おとわは言われなかった言葉の続きを探していた。

  直盛、玄蕃ほか、亡くなった16人の井伊の武者の葬儀が行われた。井伊の家臣の中に、血縁のものが亡くならなかったものはいなかった。そののち、奥山孫一郎が、「こののち中野直由に井伊を任せる」という直盛の遺言を伝える。力不足なのかと悔しい気持ちを押し殺す直親。病床で話を聞き、殿の遺言は小野政次の入れ知恵にちがいないと喚き出す奥山朝利に、直親は信じられない様子ながら疑いの気持ちを抱く。

  小野政次は政務に熱心に励み、その様子が奥山朝利の癇に障ったのか、奥山は小野家に嫁いだ娘なつとその子供亥之助(いのすけ)を取り戻すと息巻く。小野政次がなつに直接どうしたいか優しく問うと、なつは悲しみをにじませながら、お方様(千賀)にできれば残って欲しいと言われたこともあるし、引き続きこちらに厄介になりたいとお願いする。政次も、弟玄蕃の忘れ形見の亥之助を大事に思っている気持ちが溢れる。

  千賀は、亡くなった武者の遺族一人一人に手紙を書き、礼とお悔やみの気持ちを伝えていた。それに気づいたおとわも手伝っていたが、疲れて眠ってしまった千賀の傍らに、自分宛の文が残されていることに気づいてその場で読んでしまう。それは父親を亡くした娘を気遣う思いやりに溢れた文であった。

  そなたのお父上はお優しく、人の心を大切にするお方でした。それは時として頼りないとうつるほど。けれどお父上に私心はなく、井伊のためとあらばどこまでも身を削られる、そういうお方でした。井伊のために出家をし、井伊のために還俗を諦めたそなたは、お父上に似ています。そんなそなたが今ここにいてくれるということが、私にとってなによりありがたいことです。そうそう、私は何度も何度も、お父上がこういうのを聞きました。「今日働く次郎を見かけたが、また美しくなっておった。ボロをまとっておるというのに、あんな女子は他にはおらん。誰に似たのかのお。」思えば失礼な話です。「いつかもし、世が治まり穏やかになったら、辻が花を着せてやりたいのお。緋(ひ)か、葡萄色(えびいろ)、濃紅(こいくれない)もいいのお。美しいぞきっと。」そうして最後はいつも涙目で、「あの月と、どっちが美しいだろう。」たとえ、月のない夜でも。気丈なそなたのこと、我が身は墨染と無理をしているように思えます。この手紙が束の間、そなたをただの娘に戻せることを祈りつつ…。千賀。

  手紙を読みながらすすりなくおとわ。起きた千賀に月見をしたいと言うおとわだが、その時、直親としのが訪ねてくる。しのが喜びながら「後継ができた。亡き殿のくださった命。生まれ変わりではないか。」と言い出すと、千賀は急に泣き出してしまう。複雑な気持ちで陰から見守りながら、「お母様よかったのお」とだけ呟くおとわ。

  その夜、奥山朝利小野政次が酒の席でなつと亥之助をどうするか話し合うはずが、亥之助を人質としか思わぬ奥山朝利に、怒った小野政次が手酷く言い返すと、一旦は奥山が引いて納得したかに見えた。しかし、小野政次が背を向けると突然奥山が切りかかってきた。おとわが寺で負傷した政次を見つけ問いただすと、彼は呟く。「奥山殿を切ってしまった…」

 

感想

  長くなってしまった。しかし手紙を引用してよかった。やっぱり一言一言が重く、気高い文章だと思う。千賀お母さんの文章であると思えた。そして、お父さんの存在の大きさが伝わる回だった。井伊家にとってもそうだけど、特におとわにとってとても大切でかけがえのない愛する家族だった、そういう気持ちが伝わってくる回だった。

  緋か、葡萄色か、濃紅か。葡萄色(えびいろ)というのはぶどうのような赤紫のこと、濃紅は別名深紅で紅花染によるややピンクがかった濃い赤色のこと、ということで、お父さんにとっておとわは赤い色の似合う女の子だったと。どうしてか納得してしまうけれど、お父さんが言えずにいた「いつか、もし…」というのはそういう、なんでもない平和な想像だった。死んでしまってからわかるこんなささやかな、しかし実現するのは難しい願い、おとわにとってどれほど辛くてどれほど嬉しいだろう。少しでも心が慰められるといいけれど。

  そして直盛不在だと井伊家はこんなにも乱れてしまうのかと思うと、確かに直親には荷が重い仕事だったかなと思わざるを得ない。奥山家と小野家は縁戚関係になって、仲良くしていこうというところなのにこんなにいがみ合ってしまって。家臣に嫌われて居場所のないはずの小野政次が政務を取り仕切っているという状況も異常だし、これでもし小野家を排する内紛になってしまったら、織田家が喜ぶだけだと思うけどな。

  思いつきで岡崎城を占拠してしまった松平元康はこの後うまく立ち回らないと、妻と子が殺されてしまうよ。大変なことだよ。家康がこんなに間抜けに描かれていていいのか、と思わなくもないけど、多分立派に成長する前段階なのだと思う。

  ようやく子供が授かった直親としのに、おめでとう。

おんな城主直虎(8)赤ちゃんはまだか

2017・2・26放送

 

あらすじ

  井伊直親としのが夫婦となって4年、まだ子供に恵まれずにいた。

  一方駿府では、松平元康(元信から改名?)と瀬名の間に嫡男竹千代が生まれ、すぐに次の子供も授かっていた。

  今川家は安泰、敵対する尾張はすでに内通によって居城を失うなど、跡目争いによる内紛が相次いでおり、結果は見えているともっぱらの評判であった。今川義元家督を息子の氏真に譲り、尾張征伐に本腰を入れているところである。井伊は尾張攻め参戦の他に槍を200本作るようにと今川義元から命じられる。

  おとわは直親としのの間に子供が生まれるように、妙薬の麝香をあげようと、おとわは子供の頃亀之丞の父親から貰った鼓を売って手に入れてくれと小野政次に頼む。政次は多少ためらいながら引き受け、おとわが直親の子を産めば問答無用で奥方になれるのではとおとわをからかう。政次の弟の小野玄蕃とその妻なつの間にはもう子供が産まれ、夫婦仲は非常によろしいようである。

  おとわがしのに麝香を届けると、しのはおとわが毒でも盛ると言った風情で断り、おとわが呪っていると責めてきておとわと喧嘩になり、通りかかった直親が無茶苦茶を言って嘆くしのをなだめるという騒動も起こる。尾張攻めへの参戦に意欲的だったのに後継不在を理由に留守居役を命じられたことに不満があったことも手伝い、結果を出さねばと考えた直親は自ら側女を持つと決断する。直盛と千賀もむしろ前向きに側女を選定、奥山家の遠縁の娘で若くして嫁ぎ子供を二人産んだのち夫を亡くし出戻った女子を候補として挙げる。

  直親が側女を持つことを実家の父親に聞いたしのは泣いてしまい、父親に「側女がもし子を産んだとて正室の座は変わらぬ、もっとしっかりしろ」と怒られてしまう。

  ほどなくして、しのはおとわ宛に「お恨み申し上げ候」とだけ書いた置き手紙を残し失踪、理不尽な恨みを向けられおとわは怒り心頭で捜索に参加した結果、ご初代様の枯れ井戸で自殺を図るしのを発見する。

  何故こんなに私を恨むのかとおとわが怒りながら小刀を取り上げると、しのは「屋敷の皆がしのがおとわであればと思っている。直親様も。でも子供を産めば皆見直してくれると思っていたのに、子供に恵まれず、私が悪いのですか。他に誰を恨めばいいのですか」といって地面に突っ伏して泣くしの。おとわが見下ろしながら蔑むように、「では死ねば良い。さすればさすがに私の還俗も認められ、直親との間にすぐ子も出来よう」と煽りながら小刀を投げると、効果覿面、しのに刺されそうになるおとわ。いつのまにか潜んでいた傑山がすかさず取り押さえると、しのは「絶対に還俗などさせない。子供を産んで見せる」と大号泣する。

  直親が騒ぎを聞きつけてやってきて、泣くしのを見てため息をつくと、おとわが怒って言う。「ため息などつくな、あれはそなたの女房じゃろう。何故いつもそんなに他人事なのだ。子は二人で作るものであろう。どうして一緒に悲しんでやらん、一緒に悩んでやらんのだ。何故しの殿はかように一人なのだ」。直親は驚くが一切反論せず、立ち去るおとわをただ見送り、地面に落ちた麝香の箱を取り上げ、しのに寄り添い、謝る。

  おとわは怒ったまま、両親にしのに刺し殺されそうになったことを告げ、側女を置くことへの警鐘を鳴らし、しのがもし母になれば命がけで井伊家を守る武家の女子になるだろうと言う。直親としのは側女をおくまで一年の猶予が欲しいと、直盛と千賀に頭を下げ、認められる。

  そして春になり、井伊直盛と、そして小野玄蕃をはじめとした井伊家の家臣たちは出陣していくのであった。また、駿府では瀬名に出世出世と尻を叩かれる松平元康も出陣していく。桶狭間に向かって。

 

感想

  しののヤンデレ具合が天下一品、目を見張る取り乱しっぷり、いい演技でした。みんなヤンデレにしっかりお役目果たせとか正論ぶつけて、ヤンデレ度を悪化させるだけだった中、おとわは煽って怒らせ開き直らせるいい対処をしてくれました。まあヤンデレと言っても、深い愛情からではなく被害妄想をこじらせた結果だったみたいで、夫婦間にちゃんと愛情が芽生えたかは謎…というちょっとだけ情けない結末でした。残念。しかし、最後のおとわが堪忍袋が切れてしまうまで耐える経過がしっかり描かれていてよかった。いきなり怒り出すと周りが戸惑うよね。おとわが怒るのももっとも、というくらいしのが取り乱してくれてよかった。こういう描写で人物像を描いていくのすごく好き。我慢強いおとわというのが伝わる。

  直親の突き放しっぷりを最後おとわが責めるけど、ここには二人の温度差があって、思いやりの深いおとわと武功とかお役目が中心の直親では感じ方が違うんだろうなと思った。背負っているものが違うからかな。しかしせっかく夫婦なのにしっかりお役目果たせって言うだけじゃ絆が深まらないのも事実、自分は悪くないとだけ言ってれば恨まれないなんてわけないし、しのは本当は直親に怒りをぶつけたかったはずだと思うので、おとわが言った通りだったと。だから直親は反論もできなかった。これで二人の夫婦の絆が少しでも生まれるといいなと思う。

  おとわは直親に微塵も期待してないと言うか、しのと仲が壊れて自分のところにきてくれないかなとか全く思ってないのがすごいなと思った。恋する乙女だったのに、その心はもう捨ててしまったのかな。あの鼓も、ずっと持っていたのはいずれ亀之丞の笛とともに演奏するためだったと思うのに、売ってしまうから。でもきっと心の奥底に隠し持っているだけだと思うけど。

  今回は直親目線だとそんなすごいエピソードにならず、きっと桶狭間に向けての準備や武功を立てたいという話がメインになったと思うので、ここでおとわが苦しむ意味があったのだとおとわの愚痴を聞いてあげたくなった。

  そして次回、桶狭間。おとわのお父さんを始め家臣たちが大勢出陣したから、どうなるのか恐ろしい。政次の弟とか、子供生まれたばかりでいいパパしてたのに。

おんな城主直虎(7)検地がやってきた

2017・2・19放送

キャスト

 

あらすじ

  小野政次新野左馬助駿府の今川館へ出向き、直親の帰還と家督相続を認めてもらえるよう願い出る。これに対して今川義元は、直親をおとわを添わせることのないように釘を刺した上で、認める代わりに井伊谷での大規模な検地を実施するように命じてくる。検地とは、田の面積や住人の数などを記した目録を検地奉行に提出して、検地奉行がそれを確認することであり、その検地に基づいて税を課したり徴兵が行われるのである。

  これに大反発したのは川名の領地を治めるご隠居の井伊直平で、川名には隠し里があり、それを今川に知られるわけにはいかないというのである。直親がその隠し里を訪れると、そこは川名の領地から道なき山道を分入って進んだ先にある山に囲まれた棚田で、そこは豊かな田んぼの風景が広がっていた。直平が言うには、以前今川と戦をした時に劣勢になった井伊家はこの隠し里に潜み、難を逃れたのだとか。川名の隠し里は井伊にとって最後の砦なのだという直平に感銘を受けた直親は、なんとか隠し通そうと直盛に進言し、また今川家に瀬名という友人を持つおとわにも検地奉行の弱みを探って欲しいとお願いする。

  井伊家家臣から指出(さしだし)が次々と小野政次に届けられる。指出とは自分の領地の検地に必要な資料を集め提出することであり、目付役である政次にそれを取りまとめ検地奉行に渡す役割があるのだ。よって、川名の隠し里のことを政次が検地奉行に告げてしまえばご破算になってしまう。そこで直親は川名の指出と隠し里の指出を別々に作成した上でどちらも政次に手渡し、今川と井伊の間に挟まれている小野の立場を分かった上で、隠し里の指出を今川の検地奉行に知らせるかどうかは政次が決めてくれと告げる。小野玄蕃は直親が信じてくれていると喜ぶが、政次はそうは思えないでいた。

  検地奉行の岩松が井伊谷にやってきたが、政次は隠し里の指出を提出せず懐に隠し持ったままでいた。岩松は期待されていたものと正反対の几帳面さを発揮し、部下に縄で田の寸法を測らせ、指出を修正していく。もしかしたら隠し里が判明してしまうのではと不安になる直親の姿を見て、おとわは政次を訪ねて直親を助けてやって欲しいと頼むが、政次は直親のせいで自分は縁談を断られたり嫌な思いをしてきた、もう損をするのはごめんだという。政次「では還俗して俺と一緒になるか?」

  結局検地奉行に隠し里は判明してしまうものの、直親と政次の言い逃れでなんとか井伊家の土地ではないと納得させることができ、瀬名からの文で知ったおとわが検地奉行岩松の亡き妻の月命日の供養をすることでその心を解きほぐし、検地は無事に終了した。

  ところが直親と政次の仲は決裂してしまう。政次「私を信じられないというなら構いませんが、信じる振りをなさるのはやめていただきたい」直親「井伊家を守るのはおとわのためと思ってはもらえぬか」政次「…お前のそういうところが好かぬ」

  直親の妻しのがおとわへの嫉妬で苦しむのを見かねて、直親としのは家を山向こうの村へと移されることになる。

  小野玄蕃は小野家と井伊家が縁つづきになるために、しのの妹のなつと結婚することに。また、今川家では人質の竹千代こと松平元信が、今川家の松平家支配を盤石にするために瀬名と結婚していた。

 

感想

  結婚が立て続けに決まっていくけれど、どれも本人の気持ちではなく家同士のつながりのため。なのであまり幸せそうではないところがつらい。

  今回は政次の気持ちについての回でした。

  そもそも小野政次は目付役が故に今川家の犬扱いされ、井伊家での立場が弱い上に敵視されている。しかし今川家に大事にされているとは言えない。今回の隠し里の件では、もし隠蔽して見つかった場合、井伊家は誰もかばわないだろうし今川家にも処罰を受けかねない。では隠蔽せず正直に言えば、今川家には何もされないだろうが井伊家との関係が決定的に悪くなる。どちらも利益にはならないが隠蔽しないほうが保身に叶うことになる。おそらくここまでの損得勘定を見抜いた上で、直親は政次がどうするか選んでいい、といったのである。それは直親にとっては保身を追求する政次の父のようなやり方を、政次は支持しないだろうという意味での信頼はあったのかもしれない。けれど政次にとってそれは信頼という温かいものではなく、本当に井伊家のために尽くす気があるのか試してやるという冷徹な視線のように感じたことだろう。

  そして政次は隠蔽することにし、井伊家の信頼をとりあえず保つことに成功したが、隠し里の指出をずっと懐に隠し持っていた。それは、もし隠し里のことが判明した場合速やかに指出を検地奉行に差し出し、最小限の被害に止めようという、これもおそらく保身故の行動であったと思う。実際、検地奉行に隠し里が見つかってしまった時、政次は進んで指出を差し出そうとしたが、直親の政次に責任を押し付ける言葉に引き止められ、 思いとどまることになる。(直親はやはり政次を信用していなかったのだろうか。だから脅すようなことを言ってしまうのか。どうなんだろう。)それにはもしかしたらおとわの嘆願も影響したかもしれない。

  そういうふうに考えてみると、政次の心のうちは見た目よりも追い詰められていたのかもしれない。おとわに対して、直親の影を、直親を想う気持ちを感じて我慢できなくなって、もっと自分のことを考えろという気持ちになって暴言を吐いたのかもしれないな、と思う。幼い頃からおとわを大事に思ってきていたから。政次がもっと大事にされる場面が来ますように。

おんな城主直虎(6)初恋の分かれ道

2017・2・12放送

キャスト

 

あらすじ

  無事元服をすませ、直盛の養子となり、井伊直親と名前を変えた亀之丞。元服の場で井伊直盛におとわの還俗を尋ねると、今川義元へ直親の帰参を認めてもらうのが先だと言われる。おとわはそれを直接直親から聞き、「私の出家は井伊の本領安堵と引き換えなので還俗は難しい」と伝えると、直親は困った顔で「何か手を考える」と言う。直盛たちもおとわの還俗について話し合うが、新野左馬助が今川家を探ったところ、このところ今川家は尾張征伐が上手くいきすぎて人手が足らず、何か願い出れば代わりに出兵せよと命じられることが分かり、まずは直親の帰参と家督相続のみを認めてもらうことになる。

  今川家では氏真と結婚し損ねた瀬名が、鷹をもらえず雀を育てていた竹千代に「雀は役に立たないから育てても意味がない」と八つ当たりしていた。

  南渓和尚の謎かけ「むかしむかし趙という国に道威という王がおり、中と伯という二人の大臣がいた。争いごとがあってどちらを追い出すか決めるため、道威は二つの饅頭をそれぞれの大臣にやったところ、二人ともその場で一つずつ饅頭を食べ、もう一つの饅頭を中は飢えた子供にやり、伯はカビさせるまで持ち続けた。さて道威が選んだのはどちらの大臣か。」おとわ「カビさせてしまっては意味がないから中を選んだのでは。」南渓和尚「道威が選んだのは伯だった。それはどうしてか。」

  井伊直親は腕も経つし領地経営にも熱心で領民に慕われる明るく人好きのする性格をしているとすぐに評判になった。小野政次はそれでも親が死に10年も隠遁生活をすることになった原因の小野家への恨みは忘れていないだろうと思っていたが、直親はわざわざ小野政次を訪ねて、立場は違えどお互い苦労してきたのは同じだといい、聖人君子ぶりを見せつけてくる。そしておとわの還俗についても直盛に諦めよと言われるとあっさりと諦め、おとわは心の中で落胆する。

  けれども直親はおとわに、おとわが死んだことにして井伊直平の領地である川名へと移り別人として生きたらどうかと提案してくる。そしておとわと夫婦になり、できた子供を後継にするという作戦である。おとわが両親に言わずに死ぬことに抵抗を示すと、直親は生きたいように生きられない理不尽に一生耐えていくのかと問い詰めおとわを説得する。それを傑山が盗み聞きしており南渓和尚にも伝わるが、南渓和尚は最後はおとわが決めることだと傍観する構えである。

  おとわは入水自殺の偽装をすると決断するものの、やはり皆や両親との別れが耐え難く、こっそりと涙を流す。そして饅頭を見て南渓和尚の謎かけに考えを巡らせる。

  ある朝おとわは直親を寺の奥まった場所に呼び出し、「おとわは死ねぬわ」と切り出す。饅頭は直親と私なのだ。饅頭を二個とも食べたり人にやってしまえば、もう食べられなくなってしまう。一つを残しておくことで何かあった時食べることができる。井伊家のためを思えば、何かあった時還俗させて後継にできる私が死んでしまっては役に立たない。そう話すと直親はおとわはそれでいいのか、娘らしい心を捨てて井伊家のために使われるかどうかもわからぬ駒となってそれでいいのか、と訴えると、おとわは直親を見上げながら、私がカビてしまうことが井伊家のためなのだから本望だ、と言い切ってしまう。

  立ち去ろうとするおとわを後ろから抱きしめ、置いて行ってすまなかったと泣く直親。死ななければならないのは自分の心だと一人呟く直親を残して、おとわは立ち去る。

  おとわの母千賀はおとわを一人苦しめることを詫び、いずれ絶対に還俗させるから許しておくれというが、おとわはむしろ笑って、竜宮小僧をやるのも楽しいし、今のままがいいという。そして直盛におとわを還俗させるまで結婚しないで待ってやってくれと言われた直親は、あの方はどれだけ待っても私と結婚してはくれないと悲しげに笑うのだった。

  そして直親は奥山の娘しのと結婚することになる。直親は小野政次に、お前も早く身を固めろ、どうせ待っていてもおとわはお前と結婚せぬ、と笑って吐き捨てるのであった。

 

感想

  長く書きすぎてしまったが、これは書きたくなるいいストーリーだった。もちろんおとわの話それ自体も、単なる悲しい恋物語を通り越して決意と生き方の表れという意味で感動的だったが、その他の描き方も本当に良かった。南渓和尚の突き放した態度も、直親の想いの深さも、両親との絆も、何もかもがぴたりとかみ合っていいストーリーにしてくれたと思う。

  まず、直親の強い想いを知った南渓和尚が、何も起こっていないうちからおとわに謎かけをしてきたのはどれだけ先を読んだ考えだったのか。南渓和尚自身も同じような思いに苦しんだことがあるのかもしれないとも思う。

  直親もこんなにすばらしい若武者ぶりになるまでには相当な苦労があったことと思うけれど、おとわとどんな手段をとってでも一緒になろうとするのは、それがずっと目的としてあったんだろうなと思わせてくれる。それが相思相愛なのに叶わないとは、それは八つ当たりしたくもなると思う。うん、全然聖人君子ではなく、政次を恋敵として扱ったということなんだろう。

  そして両親もおとわを出家させたまま娘時代を過ごさせてしまうことに罪悪感を感じてはいることは伝わってくるし、いずれ還俗させてやりたいと考えてはいるのである。家督を継ぐとは思っていないだろうが。

  おとわも好きな人と添えなくて辛い思いをしていると思うし、おとわがカビてしまわないように見守りたい。

おんな城主直虎(5)亀之丞帰る

2017・2・5放送

 キャスト

  • 次郎法師(柴咲コウ)…おとわ。竜宮小僧の真似をして領民と親しくしている。
  • 亀之丞(三浦春馬)…おとわと別れてから10年近く経ち、大きくたくましく成長している。
  • 小野政次高橋一生)…鶴丸。但馬守。井伊家のために尽くそうとする。
  • 奥山朝利(でんでん)…井伊家の家臣。
  • 瀬名(菜々緒)…龍王丸と夫婦約束をするものの、氏真は別人と結婚してしまい、恨んでいる。
  • 今川氏真尾上松也)…うじざね。龍王丸。今川家の嫡男として北条氏康の娘と結婚する。今でも蹴鞠の名手。
  • 竹千代(阿部サダヲ)…のちの徳川家康。今川家の駿府で人質として少年時代を過ごす。

 

あらすじ

  天文23年、1554年、春。

  成長したおとわこと次郎法師は領民と共に労働に励み、頼られる存在になっていた。鶴丸は元服を済ませ小野但馬守政次となり、父とは違う井伊家への忠誠心を育てていた。今川家では、瀬名が幼い頃の約束を守って他の縁談を断っていた一方で、龍王丸こと氏真は甲斐・相模・駿河における「甲相駿三国同盟」のため北条氏康の娘早川殿を娶っていた。これによって今川家は北も東も心配いらなくなったことで三河までの支配を磐石なものにしようとしていた。

  井伊家の後継についてはおとわが出家したことで誰もいなくなっており、小野政直によって息子政次と井伊家家臣奥山の娘とを娶せその子供を井伊直盛が養子に迎えるという案が出される。井伊家の中で「今川の犬」と嫌われている小野政直の孫が井伊家の後継になるという計画に、井伊家家臣たちは大声で反対するものの、井伊直盛はその案を受け入れる。それは小野家を井伊家の縁戚とすることで、これ以上の対立関係にならないように、という思いやりであり、今川家の力が増すばかりで亀之丞を連れもどせないならその方法しかないという消去法でもあった。

  そんな中小野政直が突然病に倒れ、おとわはお見舞いに行くがそこでずっと疑問に思っていたことを聞く。どうして佐名を今川家の人質として指名するように今川方に根回ししたのかと。そのせいで小野政直は、当時の井伊家当主であり佐名の父である井伊直平に蛇蝎のごとく忌み嫌われるようになってしまったのだ。小野政直はただ井伊家に激怒していた今川義元の機嫌をとるためには美しい佐名を人質として差し出すほかないと思った、本当に他意はなく井伊のためを考えただけだと病床から苦しげに頭を下げ、息子のことを頼むと言うと、おとわも納得して帰って行った。しかしおとわを見送った政次が父の元に戻ると父は全く平然とした顔をしており、どうやら嘘をついていたようなのだ。驚く政次だが、政直は「お前は父のことを軽蔑し、こうはなりたくないと思っているのだろう。しかしお前もいずれ父のようになる」と反発する息子にお告げのように言い残し、しばらくして他界した。

  武田による南信州への侵攻が始まると、亀之丞を預けていた家にもその波が押し寄せ、井伊家は亀之丞を呼び戻すことに。屋敷は皆大喜び。そして政次の子を養子にと言う話も、そもそも縁談からなくなってしまう。一方で突然の話に動揺を隠せぬおとわに、政次は意地悪く亀之丞を意識して煩悩まみれだといい、さらに動揺を煽る。煩悩を払わねばといつにもまして修行に励むおとわ。滝行などのため山籠りをしている間に、成長した亀之丞が井伊谷に帰還し、おとわを待ち受けていた。そしてもう出家したから結婚はできないと思い決めていたおとわに、亀之丞は「還俗すればいい。俺はおとわと結婚するつもりだ」と言い放ち、驚かせるのであった。

 

感想

  乙女ゲームで言うところの女友達の役を買ってでてくれている瀬名がありがたい。しょっぱなから懇切丁寧に説明してくれて、理解が進みました、ありがとう。そして少年のはずなのに既に阿部サダヲが演じている竹千代に笑わせてもらった。服装と振る舞いで幼く見えるの本当に不思議だけど、竹千代が阿部サダヲ、よく似合ってたと思う。

  大人編になってもちゃんとみんな雰囲気があっていて、自然に見ることができた。これも子供編を濃密にやってくれていたからかな。計算では、まだおとわも二十歳になるかどうかというところかな。

  それで、政治的な話はおいておいて、おとわが亀之丞が亀之丞の父のような強面になっているのでは、と想像したり、どんな顔して会えば、とそわそわしたり、年相応のトキメキというのがとても可愛くて、そのために滝行とかするのも笑わずにいられないくすぐったさがあった。意地悪を言う政次、亀之丞の視野外からの登場でしばらく気づかないおとわという展開、すごくベタな流れで安定感を醸し出してくれて、しかも間違いがあってはならんと傑山が木の陰から見守ってるところなど、安心して笑ってていいですよという意図を感じて嬉しかった。

  亀之丞はすごく爽やかな青年に成長していて、笠のような帽子のようなものをかぶって馬に乗って野を駆けてくるシーンは子供時代との違いを強調し、服装や髪型の類似で子供時代と変わらないところを示していた。そして武士らしい快活な笑顔。おとわの前ではたまに不安そうにする様子なども変わっていないところもあると思わせてくれる。年齢的には成長したけれど井伊谷に戻るまで元服はしないと言い張って髪型も名前も改めないでいたらしい。

  この三角関係…というか両思い?を今後とも見守っていきたい。

おんな城主直虎(4)女子(おなご)にこそあれ次郎法師

2017・1・29放送

キャスト

  • 昊天小松和重)…次郎法師の兄弟子。物静かであり厳しい人柄。
  • 傑山市原隼人)…戦う僧といったいでたち。優しい目で見守ってくれる。

 

あらすじ

  おとわは井伊谷に帰ってくる。ほっとする井伊家の面々。おとわが今川に行っている間に直平に誘拐されていた鶴丸も帰宅し、親の小野政直に「これ以上井伊家に目の敵にされるようなことをしないでくれ」と訴える。

  おとわはよく考えると出家してしまえば亀之丞と夫婦になれなくなることに気づいて、今更嫌がりだすが、母千賀の「井伊家のために頑張ってえらい、三国一の姫だ」と持ち上げられてすぐ機嫌をよくする。南渓和尚は在家において尼になるより、井伊家のすぐそばの龍潭寺に引き取りたいとおとわの父直盛に言い出し、おとわは無事出家し、次郎法師となる。次郎とは代々井伊家の総領息子につける名前とのこと。

  しかし、修行という名の家事と農作に疲れた上に少量の玄米とたくあんしか食事がないのに嫌気がさし、当日の夜実家に帰ってご飯を食べているところを母千賀に見つかり、「井伊家の本領安堵と引き換えの出家なのに、戻ってきて井伊家を潰すつもりか」と怒られて、逆に「こんなところもう戻ってこない」と言い返して家を飛び出してしまう。心配そうに見守っていた父直盛の前で、いつもは表に出さない子を思う悲しみを垣間見せる千賀。本心では追い出したくなかったのである。それを見て、自分の不甲斐なさを感じる父直盛。一方でおとわは雑魚寝の布団の中で泣いていた。

  また、直満が謀反の疑いをかけられた一件において密かに殺害されていた北条家からの密使の息子が現れ、仇を討とうとしているという話が舞い込み、血気盛んな隠居の直平が小野政直のことを教えてやれば自動的に小野が暗殺されると喜びだす。難色を示す直盛だが、家臣たちは乗り気であった。それは小野政直が、井伊直満の所領を譲り受けるように今川に下知されたと言い出したからだった。

  おとわはお腹を空かせて労働に励んでいると、南渓和尚に托鉢を勧められる。勇んで飛び出していくおとわだが、托鉢の何をも知らず、恵んでくれと村をさまよい邪険にされる。さまよううち、農家からカブをなんと盗んでしまい、ご初代さまの枯れ井戸で土がついたまま貪っていると、鶴丸がやってくる。鶴丸になきながら「こんな生活嫌だ、鶴丸と夫婦約束すればよかった」と言いだすおとわ。亀之丞の竜宮小僧になると約束したのに、という話を聞いて鶴丸は「竜宮小僧ならば僧であってもなれる。むしろ僧の方が助けられることが多い」と助言しおとわを元気付ける。それをこっそり見てしまう直盛。

  おとわは南渓和尚に竜宮小僧になるにはどうしたらと相談すると、竜宮小僧の真似をすればと返され、上機嫌で飛び出していく。昊天がどうしておとわをわざわざ龍潭寺に引き取ったのかと質問すると、南渓和尚は「おとわはあんな歳で今川の下知を覆して見せた、類稀なるおなごだ。赤子のご初代さまを発見された僧も、一目見て尋常ならざるものを感じたというが、私もおとわに同じものを感じた。あれは次郎。おなごという形を取っているがあれは次郎だ」と言った。おとわは以降竜宮小僧の真似をして人々を助け、代わりに食事を恵んでもらうようになる。

  一方で直盛は、小野政直を狙った刺客をあわやというところで傑山に頼んで取り押さえてもらい、その代わりに直満の所領を半分諦めるように小野に言いつける。それは鶴丸から父親を奪ってはいけないという優しさからであった。

  おとわの元に瀬名から、龍王丸に勝ち今川の嫁の座を約束してもらったと、喜びの文が届く。しかし亀之丞からはなんの便りもないまま、生死も不明のまま、9年の月日が流れる…。

 

感想

  おなごにこそあれ次郎法師。いい言葉だなあ。

  南渓和尚が出てくるたびに名言を吐く役になっている!おとわのことを信頼して勝手をやらせていて、いずれ井伊家の当主になると実は思っているのかな。

  父と母の思いも描かれて、子供編締めくくりにふさわしい綺麗な回だった。泥だらけになっていたおとわを除いて。竜宮小僧になろうとする優しい次郎法師の誕生でした。笑顔が眩しいよ。

  小野政直が本当に今川に密告したのか、証拠もないしわからないけど、すごく疑わしい状況で、よくお父さんは小野を庇ったなと感心した。それもこれも子を思う愛情からなのかな。鶴丸はやっぱり優しい目でおとわを見守ってて、みんなおとわのこと好きでほんわかした。

 

  もう子役たちが回想でしか見られないのが残念なくらい濃密に描いてくれてありがとう、って思った。

アサシン クリード 2016年 アメリカ

監督  ジャスティン・カーゼル

脚本  ビル・コレイジ、アダム・クーパー、マイケル・レスリー

原案  ユービーアイソフトアサシン クリード

 

キャスト

前提知識

  • アサシン教団…12世紀より以前から存在すると噂される、暗殺技術に優れたものたちの秘密組織。特技は「イーグルダイブ」(高所から藁に向かって飛び降りると無傷)、「アサシンブレード」(左手薬指を切り落とし、その部分から刺突用の刃が飛び出してくる仕組みの暗殺道具)による暗殺。アサシンの信条は、「真実はなく、許されぬことなどない」。現在では非常に数を減らしている。
  • テンプル騎士団…中世ヨーロッパで活躍した騎士修道会。その後権力者を中心とする秘密組織へと移り変わり、現在に至っても影から世界を支配しようと企んでいるという。そのためにあくなき努力でエデンの果実を探している。アブスターゴ社のように現在では大企業となっている場合もある。
  • エデンの果実…りんごくらいの大きさの球体で、表面に幾何学模様の溝がある。「かつて来たりしもの」という未知の存在が地球を訪れた時に残した遺産で、いくつも存在する。どのような力を持っているのかはっきりしないが、テンプル騎士団が数多の人心を操る力を持っていると信じているのは間違いない。アサシン教団が隠匿しているため現在では居場所はわからない。
  • アニムス…テンプル騎士団が考え出した、遺伝子記憶を辿って先祖の行動を辿らせることのできる装置。追体験するのみで、過去を改変することはできない。今作ではアームの形をしたアニムスによって主人公が吊られている。
  • 流入現象…先祖の記憶を辿るうちに、現実でも過去の幻影を見るようになり、先祖の能力や記憶が現実の子孫に入り込んでくる現象のこと。短期間で急に戦闘ができるようになるのはこのため。過剰な流入現象は現実でも遺伝子記憶との同調が起こるため危険。

 

あらすじ

  以下ネタバレしまくりです。

  主人公カラム・リンチは子供の頃母を亡くしたが、それは初めて出会ったアサシン教団の父による犯行であり、かつ父の発言により何かの組織から逃げおおせることに成功する。(このとき既に素晴らしい身体能力を発揮。)

  時が経ち、死刑囚となったカラム・リンチに死刑の日がやってくる。なにかの毒を注射され死んだと思われるが、実は死んだことにしてアブスターゴ社の研究施設へ連れてこられていた。そこで医師のソフィア・リッキンから、人から暴力性を取り除く研究に協力してほしいと迫られる。というより、無理やり協力させられる。研究施設にはたくさんのアサシンの子孫たちが囚われていて、カラムは疎外されるが、それはカラムの祖先がアギラールというアサシンでエデンの果実を手にしたことのある人物であったため、アニムスにかけられることによりカラムが自動的にエデンの果実の隠し場所を自白してしまうことになるからである。

  最初は嫌々アニムスに捕まってアギラールの記憶を見せられ、幻影も見えて怯えるアギラールだが、研究施設にいた父親との対面で心境の変化が訪れる。父親がカラムの母を殺した理由は、アブスターゴ社にカラムの母が目をつけられ、研究施設へ連れていかれそうになったからだった。やはりアニムスにかけられることによる自白を恐れてのことであり、事態を理解した母も望んだそうである。父親はカラムをも殺すべきと思ったができず、逃げるように言ったのだという。昔と違って老いて弱った父に恨んでるなら殺せばいいと言われるが、カラムは結局せず、母の残したネックレス(アブスターゴ社に回収されていた)を父に渡す。

  それ以降自発的にアニムスに乗るようになると、なぜか痙攣するなどの副作用が激減する。15世紀のスペイン、スルタンの元にエデンの果実があり、それをテンプル騎士団が狙ってスルタンの王子を誘拐、アサシン教団に所属するアギラールや仲間のマリアがエデンの果実を奪われないように戦うという状況下で、人間離れしたアクションシーンで多数の敵を手玉にとるアギラールとマリア。しかしスルタンは王子の命を人質に取られてエデンの果実を差し出してしまい、大立回りの最中敵に捕まったマリアが人質となったのち殺されてしまう。なんとかテンプル騎士団の強敵を撃退したアギラールはエデンの果実を手に入れ、逃走のため海に身を投げる。その後アギラールコロンブスにエデンの果実を託していたことが判明する。

  コロンブスの墓からエデンの果実を発見するアブスターゴ社の責任者アラン・リッキンとテンプル騎士団幹部。エデンの果実を用いて人々を洗脳し支配下に置こうと目論んで来たテンプル騎士団の野望は果たされる間近なので大々的な集会を開いて祝うことに。その頃カラムとアサシン教団の子孫たちは協力して研究機関のセキュリティを突破(ここで流入現象が役に立ってる)、テンプル騎士団の集会にこっそりと忍び込み、暗殺の機会をうかがう。このとき多数のアサシン教団の子孫が死に、カラムの父親もまた。

  ここにきてようやく、自分の暴力性を取り除く研究と父親の野望の不一致に気づくソフィア・リッキンは、ショックを受けて途方に暮れているとカラムと出会い、カラムの仲間に誘われるも動けなかった。そしてカラムはまんまとアラン・リッキンを暗殺し、エデンの果実奪還に成功したのだった。父を殺されたソフィアはその後ろ姿を睨むのだった。

  

 感想

  とにかくアクションがすごい!とにかくアクションがすごい!

  原作のゲームもアクション性が売りだけど、映画版ではもっとゲームでもできないほどの多彩かつ華麗なアクションを見せてくれて、MX4Dで見たからかもしれないけど、思ったよりもずっとかっこいい作品になってた。イーグルダイブも原作より真に迫っていて、ちょっと怖かった。藁がないのだけが残念。なんでないんだろう?あとアニムスが可動式になったのも、追体験しているのがよりハッキリするし面白いアイデアだと思う。

  内容の説明不足なところは、原作と同じような置いてきぼり感があって、これもまた懐かしい…と親近感すら感じた。あとは前提知識がないとやっぱり理解しがたい世界観だと思う。この映画のために作ったシナリオだから一応完結した内容になっててよかった。もしかしたら続編あるかもだけど、売り上げ次第なのかな…。もしあったとして、また全く新しい内容かもしれないしね。

  なんか時間なかったんだろうなあって思ったのはエデンの果実の隠し場所。そんなのじゃすぐ見つかってしまうよ。もっと厳重に隠さないと!

  アサシンクリードは中世の世界観を旅しながらついでにお仕事するイメージだったから、今回の中世の描写はなかなからしさが出ててよかった。もっと市民生活の中で潜入している感じが出ると、より暗殺者らしいと思うけど。ほとんど外でおおっぴらに戦ってるからあんまりステルスプレイがなくてそこは残念だね。

  カラムの人間描写に時間を割いたところは、原作のゲームと違ってて好感が持てた。だんだんと流入現象でか、それとも追体験による精神的な共鳴なのか、カラムの方がアギラールへと寄っていく感じがすごく出てて、演技も良かったと思う。ソフィアはすごい美人で頭良くて実は善人だし、仲間にならないのが残念に思った。テンプル騎士団幹部の老婦人は、アランが殺されてもエデンの果実が奪われても表情一つ変えずに動かないでいて、もしかしてアサシン教団側のスパイだったのでは?と思ってしまった。逆の展開がゲームであったからかな。それならカラムたちが潜入できたのも納得がいくし。