読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

うさぎとファンタジー

ばらばらな思いを整理する雑記帳。

おんな城主直虎(12)おんな城主直虎

2017・3・26放送

キャスト

あらすじ

  駿府へと申し開きのために出向こうと少しの共を連れて旅立った直親は、道中でおそらく今川方と思われる武士たちに襲われ、混戦の中必死に逃げ出そうとするが叶わず、奥山孫一郎今村藤七郎ほか武士たちとともに殺されてしまう。倒れてしまうその時、直親の脳裏をよぎったのは、どんな卑怯な手を使っても戻ってくるのだと叫ぶおとわの姿であった。

  同じ頃おとわは冷水を頭からかぶりながら般若心経を唱え続けており、凍えて倒れてしまう。その直前、いつもの直親の姿を見る。(幻覚)

  直親に随行したうちの一人が井伊谷に帰り着き、掛川城手前で襲われたことを伝えると、家臣たちに衝撃が走る。実の孫を失った井伊直平は「元よりそのつもりなら切腹を申しつければ良いではないか。これではなぶり殺しではないか」と泣きながら叫ぶ。

  凍えてすっかり寝込んでしまったおとわの看病をする母・祐椿尼(千賀の出家後の名)は、おとわを連れて行こうとする直親の気配を感じて、おとわの手を取り一喝する。

  現場を目にした南渓和尚傑山ほか僧侶たちはあまりに無残な死に方に吠えながら怒りをあらわにする。南渓和尚は雪の積もってしまった直親から雪を払いのけると、「ここは寒かろう、井伊に帰ろう」と言いながらすがりついて泣き出す。

  三日三晩寝込んでいたおとわが起きだすと、直親や他の武士たちが屋敷に運び込まれたばかりであった。寝間着のままふらふらと歩きながら直親の元にたどり着くおとわ。しかし触れようと伸ばした手はしのに振り払われる。「そなたが殺したようなものではないか」と言いながら泣くしのに、空っぽな瞳で「しの殿のおっしゃる通りだ」とだけ返すと、その場をふらつきながら離れた。

  皆の葬儀の場におとわは行かず、直親に頼まれた経をご初代様の井戸で読んでいると、自然と涙が溢れてしまう。

  今川から虎松を殺せと御達しが届き、新野左馬助がなんとか取りなすと約束して駿府に向かうが、新野が切腹するから慈悲をと氏真に申し入れると、別の交換条件を飲まされてしまう。その後ろには小野政次がおり、氏真に策を授けていたのであった。松平に対して一向一揆を起こさせたのも政次の策であり、一向一揆のみならず身内の一向宗にも背かれ、それによって松平元康の勢いは沈静化していく。

  落ち込んで暮らしているおとわが井伊直平に呼ばれて酌をしにいくと、中野と新野もおり、今川に虎松の命を助ける代わりに出兵するよう要求されたと明るく話してくる。「どこかのだれかのせいではない、仏様がお決めになったことだ」と直平が、「守るべきものを守るために死んでいける男は果報者にござる」と中野が言う。おとわと酒を酌み交わすことが夢だったと語る直平と、母が見守る前で盃を交わすおとわ。それ以降おとわは木陰に隠れて飲酒を続け、役に立たない自分を責め続ける。

  その年、直平は今川に反旗を翻した阿波野氏を攻めるために出陣し、陣中にて不審な死を遂げる。新野左馬助中野直由は反乱を起こした曳馬城の飯尾連竜討伐に向かい討ち死にした。

  その後、小野政次が目付役として近隣の国衆の近藤康用鈴木重時菅沼忠久をともなって井伊谷へ帰ってくる。そして今川氏真の命により、政次が虎松の後見になったことを告げる。直接それを聞いた祐椿尼は怒りを抑え、南渓和尚を頼ると、女子ではあるが次郎法師は次郎の器だ、と微笑まれる。

  いつものようにご初代様の井戸端にいるおとわを政次が訪ねてくる。急な帰還に不審な思いを抱くおとわは、政次に直親の信頼を最初から裏切るつもりだったのかと泣きながら厳しく問う。すると政次は暗い瞳でおとわを見つめ、「恨むなら直親を恨め。下手を打ったのはあいつだという。凍りつくおとわに、政次は硬い声で、「何度も同じことを繰り返し…井伊は終わるべくして終わったのだ」とだけ言って立ち去る。おとわは怒りから昊天の槍を持ち出すが、同時にその殺意を抑える理性も働いて、皆の前で自分を責めながら地面を突き続け、槍を壊してしまう。すると、小坊主が「次郎様は井伊の竜宮小僧ではございませんでしたか」と問い、南渓和尚は、「己を責めたとて、死んだものは帰らん。じゃが、生きておるものは死んだものを己の中で活かすことができる。例えば、偲ぶことで。例えば、習うことで。時には、習わぬことで。他には…ないかのお」と微笑む。おとわの脳裏には幼い頃、亀之丞に対して誓ったことが蘇っていた。おとわの口から新たな誓いの言葉が溢れる。「亀に、この身を捧げる。亀の魂を宿し、亀となって、生きていく」。南渓和尚は優しく、「それが、お主の答えなのじゃな」と言った。

 祐椿尼はおとわの嫁入りの時のために用意していた衣装を取り出し、おとわの肩にかける。おとわは微笑みながら、「直親は最後に話した時、帰ってきたら一緒になってくれと言ったのです。こう言う意味だったのかもしれませんね」という。

  南渓和尚は政次ほか関係者のそろう席で、まだ幼い虎松の後見人を推挙すると言う。その名は、直虎。そして、驚く人々の見守る前で、派手な打掛をまとったおとわが勢いよく入ってくる。

  直虎は微笑んで言った。「我が、井伊直虎である。これより井伊は、我が治めるところとなる」

 

感想

  おとわの直親への想いがすごく、重い。それは多分直親に向けてのものだけでなく、彼が背負っていくはずだった井伊谷の未来がその上に乗っているからだと思う。おとわをはじめとする井伊家の未来を担っていくはずだった直親を失って、おとわは自分をも失ってしまう。その間にも、どんどんと井伊家の重鎮たちはいなくなってしまい、完全に今川の犬と化した小野政次が戻ってきて、井伊家は大ピンチ。おとわも決断を迫られるのであった。

  今までは単に家臣として描かれてきた人たちが、いかに井伊谷を大事に思っていたのかがわかる一幕。しかし、彼らが死んで井伊谷を守ったことで遺族たちの今川への恨みは増すばかりだったとも思うけれど。直満、直盛、直親、直平とたくさんの井伊家の人々が亡くなってしまって、残るは幼い虎松のみ、そこに満を持しての直虎ですよ。これは盛り上がる展開。しかし、なかなかうまくはいかなさそうだけど…。

  そしてどうしたのかと心配していた政次が帰ってきたけれども、誰も喜ばない。どころか、裏切り者を非難する眼差しを向けている。それを政次は当然のように受け入れているし、わざわざ嫌われるように仕向けているのかもしれない。やはり罪悪感が、自分は裏切り者だと思わせているのかもしれないし。特に久々に会ったおとわに対する態度、あれはひどかった。あれで完全におとわは政次を嫌ったし、政治的にはわからないけど、個人的には敵だと思われたと思う。政次は、おとわに顔向けできないと考えたからそんな態度になるのかな、とも思った。

  もう一つの饅頭が使われる時が、きましたよ。

おんな城主直虎(11)さらば愛しき人よ

2017・3・19放送

キャスト

 

あらすじ

  松平元康の本格的な寝返りに気づいた今川氏真寿桂尼によって、元康の妻である瀬名が自害に追い込まれそうになっていたまさにその時、単騎で石川数正が駆け付け、人質の交換を申し入れてくる。寿桂尼の孫であり、今川氏真の従兄弟に当たる鵜殿長照は、上ノ郷城が陥落した際に自害していたが、その子供たちを元康は捕らえ、交換に利用したのである。

  瀬名は岡崎城へ旅立つ前に母である佐名と「今川を手に入れる」という約束を交わす。佐名は駿府城に残り、そののち自害に追い込まれる。

  井伊谷に帰ったおとわは心配していた直親に顛末を話して聞かせ、直親はその作戦に感嘆する。

  今川家では、相次ぐ裏切りに混乱する氏真と、行く先を憂える寿桂尼によって作戦が練られる。「事というのは起こさせねば良いのです。起こる前に握りつぶすのです」

  山伏風の男により、おとわに松平元康からお礼の品が届き、直親に対して鷹狩のお誘いの文も同封されていた。その夜、直親は書状を目付役の小野政次に見せ、密かに松平元康と接触しようと思っていることを打ち明ける。今川に謀反の疑いがかけられるかもしれないと二人とも分かった上で、計画が練られる。「選ぶ余地などないではないか。俺とて、今川と共倒れはごめんだ」政次は、一切誰にも口外しない事と、一切を自分に知らせることを条件に、今川から庇い立てすることを了解する。

  松平元康との面会を終え、直親はもらった書状を見せながら政次に話して聞かせた。「お年の割に貫禄がある精悍な顔つきのお方で、手に刀傷があった」と。今川の支配から脱すれば、おとわの還俗も叶うと直親は言い、「そうすれば、お前と添うのが良いのではないかと思っている」とも言うと、政次は懐疑的な様子である。政次は、「これまで我慢してきた分、なにもかも次郎様のお好きにできるように計らってほしい」とお願いする。そこにおとわもやってきて、昔のように3人で仲良く語らう。おとわは「何やら昔に戻ったようじゃのう」と嬉しそうにつぶやく。

  翌日、呼び出しを受けた政次はいつもの報告をしに駿府へと旅立つ。その後、松下常慶という山伏風の謎の人物が訪ねてきて、松平元康からのお礼の品を持ってきたというので、おとわはもう貰っていると驚き、慌てて直親に報告に行く。「われらは、今川に計られたのかもしれぬ」

  政次は駿府寿桂尼と直に話をしていた。「井伊が松平と内通しているという噂を耳にしてのお」とわざとらしく言いながら、直親が書いた書状を床へと投げる寿桂尼。知らぬ存ぜぬを通そうとする政次だが、寿桂尼が呼んだ人物の風体が直親の言った通りのものであることに気づいてしまう。今川の目付でありながら裏切りに加担していたのかどうなのか、答えを選べと問われた政次は、「選ぶ余地などございませぬ。 私は、父の代から恩顧を得ました、今川様の目付でございます」と震えながらいうしかなかったのである。

  直親は駿府から呼び出しを受ける。こうなっては松平元康に合力を願うしかないと、おとわと南渓和尚と松下常慶は岡崎城を訪ねるが、すげなく却下されてしまう。おとわは瀬名を頼って、滞在している寺を訪ね、瀬名に井伊谷に来てもらい松平元康の合力を引き出そうと頼み込むが、そもそも松平の家臣たちに捨て置かれそうになっていた身の上でもあり、弱々しく断られるばかり、最後には寺を追い出されてしまう。「私は参れませぬ。井伊に置き去りにされては、私は今川を手に入れることはできませぬ。亡き母と約束したのです」という瀬名に、泣き叫びながら寺の扉を叩き続けるおとわ。

  駿府では政次が、父のようになりたくないと思っていたのにという顔をして欄干にもたれかかっていた。

  今川の兵がすぐそこまで迫っているという知らせに大慌てになる井伊家の家臣たち。迎え討とうと立ち上がる井伊直平や家臣たちに、直親は、「是非、さように願います。虎松がかような状況に追い込まれた時には。此度のことはそれがしの失態、それがしが申し開きに向かえば済むことでございます」とだけ告げる。

  深夜まで帰りを待っていたしのと虎松に、直親は笑顔で、虎松はご初代様の生まれ変わりではないか、お前が生んだのはただならぬ子供ではないか、と語りかける。直親は虎松に、「生きておれば、必ず、好機はある」と語りかける。

  翌朝、帰って来たおとわに直親が謝ると、おとわは私が命乞いなどしなければ、私が男子であれば、といって自分を責めた。直親は、「それは困る。もしおとわが女子でなければ、俺のたった一つの美しい思い出がなくなってしまう」と泣き笑いの顔で語る。経を読んでくれと頼む直親に、おとわはあれは死者を悼むためのものだと断る。泣くのをなんとか堪える様子のおとわを直親は抱きしめて、戻ったら一緒になってくれと叫ぶと、おとわも抱きしめ返しながらこころえたと囁く。背を向ける直親におとわは「待っておるからな、亀。何をしても、どんな卑怯な手を使っても、戻ってくるのじゃ」と叫ぶと、直親は一瞬笑って頷き、立ち去る。

 

感想

  あまりにも見事な別れの描写に言葉も出ないほど心を打たれた。前半ののんびりとした空気と、後半の緊迫感溢れる空気の違いをよくおとわが作り出してくれていたと思うし、直親の憂いのある表情や政次の疲弊した様子とかも臨場感にあふれていた。

  おとわと瀬名の友情に大きな亀裂が入ってしまったことが、とても辛い。これでは仲直りできないままかもしれない。

  直親と政次の今までにないくらい良好になった信頼関係が寿桂尼の策略によって崩壊してしまう様子は胸が締め付けられるような寂しいものだった。救いは直親は政次を信じたままだったということかな。

  直親とおとわの関係も終わりを迎える。物分かり良く諦めて政次と夫婦になればいいとまで発言した直親が、やはり本心ではおとわと夫婦になりたいと思っていたという展開がすごくよかった。最後におとわが直親を亀と呼ぶのもよかった。あの3人は子供の頃はすごく仲良しだった、それがすごく切なく悲しい思い出になってしまうなんて。

  周りの家臣たちも次々と当主と仰ぐべき人を失って、これからどうすればいいのか、ってなってしまいそうで心配している。肝心の虎松はまだ幼児で、当主に仰ぐにはまだまだ時間がかかるし。ここで主人公の出番が回ってくるわけですね!

おんな城主直虎(10)走れ竜宮小僧

2017・3・12放送

あらすじ

  奥山朝利をもみ合いの末斬ってしまった小野政次は、おとわを頼ってくる。奥山の息子の孫一郎、娘のしの(井伊直親の妻)は、政次を捜して復讐するというが、本当は奥山朝利の方が斬りかかってきて政次ともみ合いになったのである。おとわは事情を知り、政次に対して、直親に事情を打ち明けるべきだと進言するが、政次は彼の義父を殺めてしまった負い目からそれができないと弱気な様子であり、おとわは自分に任せて欲しいと訴える。

  奥山朝利の娘で小野政次の亡き弟の妻であるなつが、井伊直親としのや奥山孫一郎が揃って話し合いをしている場に、小野の名代としてやってくる。孫一郎にどうして小野の名代なのか、自分の父が殺されたというのに、と責め立てられるとなつは、亡き殿様は私に井伊の皆様と小野家の橋渡しになってくれとおっしゃった、私は夫亡き後もその任を全うしたいと告げ、みなを黙らせる。また、後ろに控えていた直親の義母の千賀も、父の家と母の家が対立すれば亥之助の気持ちや立場が辛くなると助言し、孫一郎を落ち着かせる。直親も現場の様子や凶器が奥山朝利脇差であったことから、政次に殺意はなかったとみなを説き伏せ、政次へのお咎めなしということで話し合いはおさまった。

  すっかり気弱になった政次はなつ(と、なつに話し合いを頼んだおとわ)に強く感謝し、家族の絆を確認した。また、政次は直親と密会し、自分を庇ってくれたことへ膝を折って礼を述べると、直親は「俺は信じたぞ、鶴。これで検地のときの借りは返したからな」という。立ち去る背中に政次は「亀、お義父上を、すまなかった」と声をかけると、直親は「俺でもああする」とだけ返した。

  そもそもこのような事態にならぬように気をつけるべきだったと反省したおとわは、小野に反発する先鋒の井伊直平や中野に、小野政次が怯えて写経をやっているという噂を流し、和解へと導く努力をする。

  直親としのには冬、男の子供が生まれ、虎松と名付けられた。お祝いに小野政次が持ってきたのは以前に父政直が取り上げた井伊直満の所領を返還するという内容の書状だった。直親はおとわに感謝して、何か欲しいものはないかと尋ねると、おとわは今日という日が日々であるように、喜びに満ちた日々が続くように、井伊を守って欲しいと答える。

 

  桶狭間の戦いから一年以上経ち、岡崎城を守っていたはずの松平元康が今川家を裏切って織田家につくと、今川方だった西側の領主たちは次々と寝返っていった。今川氏真は怒り、駿府に残された瀬名たちの命は風前の灯だった。南渓和尚は命乞いに行こうとするが、すでにおとわは出発していた。

  おとわは寿桂尼と面会し命乞いをするが、折悪く寿桂尼の孫が松平の軍勢にに攻められ自害したと知らせが入り、寿桂尼は瀬名に明日自害を命じるから引導を渡せとおとわに告げる。おとわは気弱になる瀬名を励まし励まし、翌朝籠に乗せられる手前で時間稼ぎをしているところへ、南渓和尚が到着する。

 

感想

  鶴と亀の因縁が終わった、かなと思える展開だった。井伊家と小野家には明白な対立関係があって、それに影響されて直親と政次も素直になれなかったけれど、二人ともがなんとか手を伸ばして和解したのかなと思えた。その中でも特に、検地の時の借りは返したぞ、というセリフが良かった。あの時実際には何の貸しにもなっていなかったのに、政次への信頼が足りていなかったことが実は直親の心を苦しめていたのだなあと思うと和解できて良かったと思う。あとは、いつも嫌味ばっかり言ってるから、弱った政次が珍しくて魅力的だった。あと本当に幽霊を恐れて写経してたのには笑った。

  子供が生まれたというのに、おとわをお姫様扱いしてくる直親には憎めないものを感じる。眩しいものを見るような顔、上手い。気持ちはまだ両思いのようです。

  瀬名がすっかり弱ってて、あの強気だった瀬名が、かわいそうだった。あと大人になってからは初対面だったみたいで、二人とも一瞬相手のことがわかってなかった。文通してた友達だもんね。死なない、と思うけど、不安になってしまう。お子さんがいたはずだけど、無事なのかな。松平元康(阿部サダヲ)、早く迎えにきてあげて!

おんな城主直虎(9)桶狭間に死す

2017・3・5放送

キャスト

  • 中野直由(筧 利夫)…なおよし。井伊家から分家した井伊家の家臣で忠臣。戦に長けている。

 

あらすじ

  永禄三年(1560年)五月、今川義元は25000人以上の大軍を連れて尾張征伐に乗り出した。しかし、桶狭間において昼ごろ豪雨に見舞われ休憩中だった今川軍本隊に、尾張の織田軍が奇襲をかけ、たちまち乱戦に突入してしまう。

  一方井伊谷では、次郎法師ことおとわとその母千賀が、井伊家のご初代様の井戸で無事の祈りを捧げていたところ、昊天が走ってきて今川軍大敗を伝える。動揺するおとわと、井伊家の人々。

  松平元康は尾張の大高城を占拠しているところに今川義元の訃報に接し、どうしたらよいか戸惑いながら妻の瀬名による叱咤激励を思い出し、そのはずみで三河岡崎城を目指す。すると今川の城代は逃げてしまっており故郷である空の岡崎城を取り戻すことができた。

  次々と井伊谷に運び込まれる負傷者の手当てに奔走するおとわなど僧と井伊家ゆかりの女たち。奥山朝利が運び込まれ、手当てされながら小野玄蕃の見事な戦死を告げ、その妻なつは動揺を隠せない。小野政次は泣くのを必死でこらえていた。

  駿府では今川義元の代わりに指揮をしなくてはならなくなった今川氏真は、重責に耐えられなくなり家臣に丸投げしてしまう。

  井伊谷井伊直盛が首だけとなって帰還する。乱戦になり奥山孫一郎と二人で戦った直盛は、織田軍に首をあげられるよりは井伊のために死にたいと言い出し、自害する。その首を織田軍のふりをして掲げ乱戦を突破せよと直盛は言い、井伊に奥山孫一郎と言う若武者を残すことを選んだのである。それを聞き、ご初代様の井戸で号泣するおとわ。「いつか、もし…」と言いかけやめた、最後に見た父親を思い出し、おとわは言われなかった言葉の続きを探していた。

  直盛、玄蕃ほか、亡くなった16人の井伊の武者の葬儀が行われた。井伊の家臣の中に、血縁のものが亡くならなかったものはいなかった。そののち、奥山孫一郎が、「こののち中野直由に井伊を任せる」という直盛の遺言を伝える。力不足なのかと悔しい気持ちを押し殺す直親。病床で話を聞き、殿の遺言は小野政次の入れ知恵にちがいないと喚き出す奥山朝利に、直親は信じられない様子ながら疑いの気持ちを抱く。

  小野政次は政務に熱心に励み、その様子が奥山朝利の癇に障ったのか、奥山は小野家に嫁いだ娘なつとその子供亥之助(いのすけ)を取り戻すと息巻く。小野政次がなつに直接どうしたいか優しく問うと、なつは悲しみをにじませながら、お方様(千賀)にできれば残って欲しいと言われたこともあるし、引き続きこちらに厄介になりたいとお願いする。政次も、弟玄蕃の忘れ形見の亥之助を大事に思っている気持ちが溢れる。

  千賀は、亡くなった武者の遺族一人一人に手紙を書き、礼とお悔やみの気持ちを伝えていた。それに気づいたおとわも手伝っていたが、疲れて眠ってしまった千賀の傍らに、自分宛の文が残されていることに気づいてその場で読んでしまう。それは父親を亡くした娘を気遣う思いやりに溢れた文であった。

  そなたのお父上はお優しく、人の心を大切にするお方でした。それは時として頼りないとうつるほど。けれどお父上に私心はなく、井伊のためとあらばどこまでも身を削られる、そういうお方でした。井伊のために出家をし、井伊のために還俗を諦めたそなたは、お父上に似ています。そんなそなたが今ここにいてくれるということが、私にとってなによりありがたいことです。そうそう、私は何度も何度も、お父上がこういうのを聞きました。「今日働く次郎を見かけたが、また美しくなっておった。ボロをまとっておるというのに、あんな女子は他にはおらん。誰に似たのかのお。」思えば失礼な話です。「いつかもし、世が治まり穏やかになったら、辻が花を着せてやりたいのお。緋(ひ)か、葡萄色(えびいろ)、濃紅(こいくれない)もいいのお。美しいぞきっと。」そうして最後はいつも涙目で、「あの月と、どっちが美しいだろう。」たとえ、月のない夜でも。気丈なそなたのこと、我が身は墨染と無理をしているように思えます。この手紙が束の間、そなたをただの娘に戻せることを祈りつつ…。千賀。

  手紙を読みながらすすりなくおとわ。起きた千賀に月見をしたいと言うおとわだが、その時、直親としのが訪ねてくる。しのが喜びながら「後継ができた。亡き殿のくださった命。生まれ変わりではないか。」と言い出すと、千賀は急に泣き出してしまう。複雑な気持ちで陰から見守りながら、「お母様よかったのお」とだけ呟くおとわ。

  その夜、奥山朝利小野政次が酒の席でなつと亥之助をどうするか話し合うはずが、亥之助を人質としか思わぬ奥山朝利に、怒った小野政次が手酷く言い返すと、一旦は奥山が引いて納得したかに見えた。しかし、小野政次が背を向けると突然奥山が切りかかってきた。おとわが寺で負傷した政次を見つけ問いただすと、彼は呟く。「奥山殿を切ってしまった…」

 

感想

  長くなってしまった。しかし手紙を引用してよかった。やっぱり一言一言が重く、気高い文章だと思う。千賀お母さんの文章であると思えた。そして、お父さんの存在の大きさが伝わる回だった。井伊家にとってもそうだけど、特におとわにとってとても大切でかけがえのない愛する家族だった、そういう気持ちが伝わってくる回だった。

  緋か、葡萄色か、濃紅か。葡萄色(えびいろ)というのはぶどうのような赤紫のこと、濃紅は別名深紅で紅花染によるややピンクがかった濃い赤色のこと、ということで、お父さんにとっておとわは赤い色の似合う女の子だったと。どうしてか納得してしまうけれど、お父さんが言えずにいた「いつか、もし…」というのはそういう、なんでもない平和な想像だった。死んでしまってからわかるこんなささやかな、しかし実現するのは難しい願い、おとわにとってどれほど辛くてどれほど嬉しいだろう。少しでも心が慰められるといいけれど。

  そして直盛不在だと井伊家はこんなにも乱れてしまうのかと思うと、確かに直親には荷が重い仕事だったかなと思わざるを得ない。奥山家と小野家は縁戚関係になって、仲良くしていこうというところなのにこんなにいがみ合ってしまって。家臣に嫌われて居場所のないはずの小野政次が政務を取り仕切っているという状況も異常だし、これでもし小野家を排する内紛になってしまったら、織田家が喜ぶだけだと思うけどな。

  思いつきで岡崎城を占拠してしまった松平元康はこの後うまく立ち回らないと、妻と子が殺されてしまうよ。大変なことだよ。家康がこんなに間抜けに描かれていていいのか、と思わなくもないけど、多分立派に成長する前段階なのだと思う。

  ようやく子供が授かった直親としのに、おめでとう。

おんな城主直虎(8)赤ちゃんはまだか

2017・2・26放送

 

あらすじ

  井伊直親としのが夫婦となって4年、まだ子供に恵まれずにいた。

  一方駿府では、松平元康(元信から改名?)と瀬名の間に嫡男竹千代が生まれ、すぐに次の子供も授かっていた。

  今川家は安泰、敵対する尾張はすでに内通によって居城を失うなど、跡目争いによる内紛が相次いでおり、結果は見えているともっぱらの評判であった。今川義元家督を息子の氏真に譲り、尾張征伐に本腰を入れているところである。井伊は尾張攻め参戦の他に槍を200本作るようにと今川義元から命じられる。

  おとわは直親としのの間に子供が生まれるように、妙薬の麝香をあげようと、おとわは子供の頃亀之丞の父親から貰った鼓を売って手に入れてくれと小野政次に頼む。政次は多少ためらいながら引き受け、おとわが直親の子を産めば問答無用で奥方になれるのではとおとわをからかう。政次の弟の小野玄蕃とその妻なつの間にはもう子供が産まれ、夫婦仲は非常によろしいようである。

  おとわがしのに麝香を届けると、しのはおとわが毒でも盛ると言った風情で断り、おとわが呪っていると責めてきておとわと喧嘩になり、通りかかった直親が無茶苦茶を言って嘆くしのをなだめるという騒動も起こる。尾張攻めへの参戦に意欲的だったのに後継不在を理由に留守居役を命じられたことに不満があったことも手伝い、結果を出さねばと考えた直親は自ら側女を持つと決断する。直盛と千賀もむしろ前向きに側女を選定、奥山家の遠縁の娘で若くして嫁ぎ子供を二人産んだのち夫を亡くし出戻った女子を候補として挙げる。

  直親が側女を持つことを実家の父親に聞いたしのは泣いてしまい、父親に「側女がもし子を産んだとて正室の座は変わらぬ、もっとしっかりしろ」と怒られてしまう。

  ほどなくして、しのはおとわ宛に「お恨み申し上げ候」とだけ書いた置き手紙を残し失踪、理不尽な恨みを向けられおとわは怒り心頭で捜索に参加した結果、ご初代様の枯れ井戸で自殺を図るしのを発見する。

  何故こんなに私を恨むのかとおとわが怒りながら小刀を取り上げると、しのは「屋敷の皆がしのがおとわであればと思っている。直親様も。でも子供を産めば皆見直してくれると思っていたのに、子供に恵まれず、私が悪いのですか。他に誰を恨めばいいのですか」といって地面に突っ伏して泣くしの。おとわが見下ろしながら蔑むように、「では死ねば良い。さすればさすがに私の還俗も認められ、直親との間にすぐ子も出来よう」と煽りながら小刀を投げると、効果覿面、しのに刺されそうになるおとわ。いつのまにか潜んでいた傑山がすかさず取り押さえると、しのは「絶対に還俗などさせない。子供を産んで見せる」と大号泣する。

  直親が騒ぎを聞きつけてやってきて、泣くしのを見てため息をつくと、おとわが怒って言う。「ため息などつくな、あれはそなたの女房じゃろう。何故いつもそんなに他人事なのだ。子は二人で作るものであろう。どうして一緒に悲しんでやらん、一緒に悩んでやらんのだ。何故しの殿はかように一人なのだ」。直親は驚くが一切反論せず、立ち去るおとわをただ見送り、地面に落ちた麝香の箱を取り上げ、しのに寄り添い、謝る。

  おとわは怒ったまま、両親にしのに刺し殺されそうになったことを告げ、側女を置くことへの警鐘を鳴らし、しのがもし母になれば命がけで井伊家を守る武家の女子になるだろうと言う。直親としのは側女をおくまで一年の猶予が欲しいと、直盛と千賀に頭を下げ、認められる。

  そして春になり、井伊直盛と、そして小野玄蕃をはじめとした井伊家の家臣たちは出陣していくのであった。また、駿府では瀬名に出世出世と尻を叩かれる松平元康も出陣していく。桶狭間に向かって。

 

感想

  しののヤンデレ具合が天下一品、目を見張る取り乱しっぷり、いい演技でした。みんなヤンデレにしっかりお役目果たせとか正論ぶつけて、ヤンデレ度を悪化させるだけだった中、おとわは煽って怒らせ開き直らせるいい対処をしてくれました。まあヤンデレと言っても、深い愛情からではなく被害妄想をこじらせた結果だったみたいで、夫婦間にちゃんと愛情が芽生えたかは謎…というちょっとだけ情けない結末でした。残念。しかし、最後のおとわが堪忍袋が切れてしまうまで耐える経過がしっかり描かれていてよかった。いきなり怒り出すと周りが戸惑うよね。おとわが怒るのももっとも、というくらいしのが取り乱してくれてよかった。こういう描写で人物像を描いていくのすごく好き。我慢強いおとわというのが伝わる。

  直親の突き放しっぷりを最後おとわが責めるけど、ここには二人の温度差があって、思いやりの深いおとわと武功とかお役目が中心の直親では感じ方が違うんだろうなと思った。背負っているものが違うからかな。しかしせっかく夫婦なのにしっかりお役目果たせって言うだけじゃ絆が深まらないのも事実、自分は悪くないとだけ言ってれば恨まれないなんてわけないし、しのは本当は直親に怒りをぶつけたかったはずだと思うので、おとわが言った通りだったと。だから直親は反論もできなかった。これで二人の夫婦の絆が少しでも生まれるといいなと思う。

  おとわは直親に微塵も期待してないと言うか、しのと仲が壊れて自分のところにきてくれないかなとか全く思ってないのがすごいなと思った。恋する乙女だったのに、その心はもう捨ててしまったのかな。あの鼓も、ずっと持っていたのはいずれ亀之丞の笛とともに演奏するためだったと思うのに、売ってしまうから。でもきっと心の奥底に隠し持っているだけだと思うけど。

  今回は直親目線だとそんなすごいエピソードにならず、きっと桶狭間に向けての準備や武功を立てたいという話がメインになったと思うので、ここでおとわが苦しむ意味があったのだとおとわの愚痴を聞いてあげたくなった。

  そして次回、桶狭間。おとわのお父さんを始め家臣たちが大勢出陣したから、どうなるのか恐ろしい。政次の弟とか、子供生まれたばかりでいいパパしてたのに。

おんな城主直虎(7)検地がやってきた

2017・2・19放送

キャスト

 

あらすじ

  小野政次新野左馬助駿府の今川館へ出向き、直親の帰還と家督相続を認めてもらえるよう願い出る。これに対して今川義元は、直親をおとわを添わせることのないように釘を刺した上で、認める代わりに井伊谷での大規模な検地を実施するように命じてくる。検地とは、田の面積や住人の数などを記した目録を検地奉行に提出して、検地奉行がそれを確認することであり、その検地に基づいて税を課したり徴兵が行われるのである。

  これに大反発したのは川名の領地を治めるご隠居の井伊直平で、川名には隠し里があり、それを今川に知られるわけにはいかないというのである。直親がその隠し里を訪れると、そこは川名の領地から道なき山道を分入って進んだ先にある山に囲まれた棚田で、そこは豊かな田んぼの風景が広がっていた。直平が言うには、以前今川と戦をした時に劣勢になった井伊家はこの隠し里に潜み、難を逃れたのだとか。川名の隠し里は井伊にとって最後の砦なのだという直平に感銘を受けた直親は、なんとか隠し通そうと直盛に進言し、また今川家に瀬名という友人を持つおとわにも検地奉行の弱みを探って欲しいとお願いする。

  井伊家家臣から指出(さしだし)が次々と小野政次に届けられる。指出とは自分の領地の検地に必要な資料を集め提出することであり、目付役である政次にそれを取りまとめ検地奉行に渡す役割があるのだ。よって、川名の隠し里のことを政次が検地奉行に告げてしまえばご破算になってしまう。そこで直親は川名の指出と隠し里の指出を別々に作成した上でどちらも政次に手渡し、今川と井伊の間に挟まれている小野の立場を分かった上で、隠し里の指出を今川の検地奉行に知らせるかどうかは政次が決めてくれと告げる。小野玄蕃は直親が信じてくれていると喜ぶが、政次はそうは思えないでいた。

  検地奉行の岩松が井伊谷にやってきたが、政次は隠し里の指出を提出せず懐に隠し持ったままでいた。岩松は期待されていたものと正反対の几帳面さを発揮し、部下に縄で田の寸法を測らせ、指出を修正していく。もしかしたら隠し里が判明してしまうのではと不安になる直親の姿を見て、おとわは政次を訪ねて直親を助けてやって欲しいと頼むが、政次は直親のせいで自分は縁談を断られたり嫌な思いをしてきた、もう損をするのはごめんだという。政次「では還俗して俺と一緒になるか?」

  結局検地奉行に隠し里は判明してしまうものの、直親と政次の言い逃れでなんとか井伊家の土地ではないと納得させることができ、瀬名からの文で知ったおとわが検地奉行岩松の亡き妻の月命日の供養をすることでその心を解きほぐし、検地は無事に終了した。

  ところが直親と政次の仲は決裂してしまう。政次「私を信じられないというなら構いませんが、信じる振りをなさるのはやめていただきたい」直親「井伊家を守るのはおとわのためと思ってはもらえぬか」政次「…お前のそういうところが好かぬ」

  直親の妻しのがおとわへの嫉妬で苦しむのを見かねて、直親としのは家を山向こうの村へと移されることになる。

  小野玄蕃は小野家と井伊家が縁つづきになるために、しのの妹のなつと結婚することに。また、今川家では人質の竹千代こと松平元信が、今川家の松平家支配を盤石にするために瀬名と結婚していた。

 

感想

  結婚が立て続けに決まっていくけれど、どれも本人の気持ちではなく家同士のつながりのため。なのであまり幸せそうではないところがつらい。

  今回は政次の気持ちについての回でした。

  そもそも小野政次は目付役が故に今川家の犬扱いされ、井伊家での立場が弱い上に敵視されている。しかし今川家に大事にされているとは言えない。今回の隠し里の件では、もし隠蔽して見つかった場合、井伊家は誰もかばわないだろうし今川家にも処罰を受けかねない。では隠蔽せず正直に言えば、今川家には何もされないだろうが井伊家との関係が決定的に悪くなる。どちらも利益にはならないが隠蔽しないほうが保身に叶うことになる。おそらくここまでの損得勘定を見抜いた上で、直親は政次がどうするか選んでいい、といったのである。それは直親にとっては保身を追求する政次の父のようなやり方を、政次は支持しないだろうという意味での信頼はあったのかもしれない。けれど政次にとってそれは信頼という温かいものではなく、本当に井伊家のために尽くす気があるのか試してやるという冷徹な視線のように感じたことだろう。

  そして政次は隠蔽することにし、井伊家の信頼をとりあえず保つことに成功したが、隠し里の指出をずっと懐に隠し持っていた。それは、もし隠し里のことが判明した場合速やかに指出を検地奉行に差し出し、最小限の被害に止めようという、これもおそらく保身故の行動であったと思う。実際、検地奉行に隠し里が見つかってしまった時、政次は進んで指出を差し出そうとしたが、直親の政次に責任を押し付ける言葉に引き止められ、 思いとどまることになる。(直親はやはり政次を信用していなかったのだろうか。だから脅すようなことを言ってしまうのか。どうなんだろう。)それにはもしかしたらおとわの嘆願も影響したかもしれない。

  そういうふうに考えてみると、政次の心のうちは見た目よりも追い詰められていたのかもしれない。おとわに対して、直親の影を、直親を想う気持ちを感じて我慢できなくなって、もっと自分のことを考えろという気持ちになって暴言を吐いたのかもしれないな、と思う。幼い頃からおとわを大事に思ってきていたから。政次がもっと大事にされる場面が来ますように。

おんな城主直虎(6)初恋の分かれ道

2017・2・12放送

キャスト

 

あらすじ

  無事元服をすませ、直盛の養子となり、井伊直親と名前を変えた亀之丞。元服の場で井伊直盛におとわの還俗を尋ねると、今川義元へ直親の帰参を認めてもらうのが先だと言われる。おとわはそれを直接直親から聞き、「私の出家は井伊の本領安堵と引き換えなので還俗は難しい」と伝えると、直親は困った顔で「何か手を考える」と言う。直盛たちもおとわの還俗について話し合うが、新野左馬助が今川家を探ったところ、このところ今川家は尾張征伐が上手くいきすぎて人手が足らず、何か願い出れば代わりに出兵せよと命じられることが分かり、まずは直親の帰参と家督相続のみを認めてもらうことになる。

  今川家では氏真と結婚し損ねた瀬名が、鷹をもらえず雀を育てていた竹千代に「雀は役に立たないから育てても意味がない」と八つ当たりしていた。

  南渓和尚の謎かけ「むかしむかし趙という国に道威という王がおり、中と伯という二人の大臣がいた。争いごとがあってどちらを追い出すか決めるため、道威は二つの饅頭をそれぞれの大臣にやったところ、二人ともその場で一つずつ饅頭を食べ、もう一つの饅頭を中は飢えた子供にやり、伯はカビさせるまで持ち続けた。さて道威が選んだのはどちらの大臣か。」おとわ「カビさせてしまっては意味がないから中を選んだのでは。」南渓和尚「道威が選んだのは伯だった。それはどうしてか。」

  井伊直親は腕も経つし領地経営にも熱心で領民に慕われる明るく人好きのする性格をしているとすぐに評判になった。小野政次はそれでも親が死に10年も隠遁生活をすることになった原因の小野家への恨みは忘れていないだろうと思っていたが、直親はわざわざ小野政次を訪ねて、立場は違えどお互い苦労してきたのは同じだといい、聖人君子ぶりを見せつけてくる。そしておとわの還俗についても直盛に諦めよと言われるとあっさりと諦め、おとわは心の中で落胆する。

  けれども直親はおとわに、おとわが死んだことにして井伊直平の領地である川名へと移り別人として生きたらどうかと提案してくる。そしておとわと夫婦になり、できた子供を後継にするという作戦である。おとわが両親に言わずに死ぬことに抵抗を示すと、直親は生きたいように生きられない理不尽に一生耐えていくのかと問い詰めおとわを説得する。それを傑山が盗み聞きしており南渓和尚にも伝わるが、南渓和尚は最後はおとわが決めることだと傍観する構えである。

  おとわは入水自殺の偽装をすると決断するものの、やはり皆や両親との別れが耐え難く、こっそりと涙を流す。そして饅頭を見て南渓和尚の謎かけに考えを巡らせる。

  ある朝おとわは直親を寺の奥まった場所に呼び出し、「おとわは死ねぬわ」と切り出す。饅頭は直親と私なのだ。饅頭を二個とも食べたり人にやってしまえば、もう食べられなくなってしまう。一つを残しておくことで何かあった時食べることができる。井伊家のためを思えば、何かあった時還俗させて後継にできる私が死んでしまっては役に立たない。そう話すと直親はおとわはそれでいいのか、娘らしい心を捨てて井伊家のために使われるかどうかもわからぬ駒となってそれでいいのか、と訴えると、おとわは直親を見上げながら、私がカビてしまうことが井伊家のためなのだから本望だ、と言い切ってしまう。

  立ち去ろうとするおとわを後ろから抱きしめ、置いて行ってすまなかったと泣く直親。死ななければならないのは自分の心だと一人呟く直親を残して、おとわは立ち去る。

  おとわの母千賀はおとわを一人苦しめることを詫び、いずれ絶対に還俗させるから許しておくれというが、おとわはむしろ笑って、竜宮小僧をやるのも楽しいし、今のままがいいという。そして直盛におとわを還俗させるまで結婚しないで待ってやってくれと言われた直親は、あの方はどれだけ待っても私と結婚してはくれないと悲しげに笑うのだった。

  そして直親は奥山の娘しのと結婚することになる。直親は小野政次に、お前も早く身を固めろ、どうせ待っていてもおとわはお前と結婚せぬ、と笑って吐き捨てるのであった。

 

感想

  長く書きすぎてしまったが、これは書きたくなるいいストーリーだった。もちろんおとわの話それ自体も、単なる悲しい恋物語を通り越して決意と生き方の表れという意味で感動的だったが、その他の描き方も本当に良かった。南渓和尚の突き放した態度も、直親の想いの深さも、両親との絆も、何もかもがぴたりとかみ合っていいストーリーにしてくれたと思う。

  まず、直親の強い想いを知った南渓和尚が、何も起こっていないうちからおとわに謎かけをしてきたのはどれだけ先を読んだ考えだったのか。南渓和尚自身も同じような思いに苦しんだことがあるのかもしれないとも思う。

  直親もこんなにすばらしい若武者ぶりになるまでには相当な苦労があったことと思うけれど、おとわとどんな手段をとってでも一緒になろうとするのは、それがずっと目的としてあったんだろうなと思わせてくれる。それが相思相愛なのに叶わないとは、それは八つ当たりしたくもなると思う。うん、全然聖人君子ではなく、政次を恋敵として扱ったということなんだろう。

  そして両親もおとわを出家させたまま娘時代を過ごさせてしまうことに罪悪感を感じてはいることは伝わってくるし、いずれ還俗させてやりたいと考えてはいるのである。家督を継ぐとは思っていないだろうが。

  おとわも好きな人と添えなくて辛い思いをしていると思うし、おとわがカビてしまわないように見守りたい。